ポストコロナ時代における学びの形②〜「学生の本分」である授業の質向上〜

東京に緊急事態宣言が発令されてから早1週間強が経ちました。大抵の飲食店は20時までに閉まってしまうものの、他の業種は感染対策を講じながら通常運転しているところも多く、夕食をとる時間だけ気をつけながらあまり変わらない日常を過ごしております😃


さて、ポストコロナ時代に向けて大学における学びの形への変容圧力がかかっていることは先週書きました🖊
今日は具体的にどう変わっていくべきなのか、もう少し掘り下げて考えてみたいと思います。


終身雇用が当たり前だったこれまでは、企業に入ってから必要なスキルは身に着けさせるという前提の下、大学生に期待されるのは主にコミュニケーション能力でした。これは授業外で養われる部分も大きく、学位さえとれれば授業の質は顧みなかったのも無理ありません。むしろレジュメを配ってテストやレポート1回だけ、あるいは出席点重視であとは簡単な小テストなど楽に単位を取れる方が「就活エピソード」としても使いやすい他の活動で忙しい学生達にとっては有難かった側面もあるわけです。


しかし、いまや世界を牽引するグローバル企業はジョブ型雇用重視の傾向が強いというのは知られているところです。日本のポテンシャル採用は仕事内容と本人の志向のミスマッチというリスクを排除しきれませんし、企業にとっても社内研修で育成していく終身雇用を前提としており、少なくとも大体10年くらいは勤めあげないとペイしないリスクをはらむシステムです。世界中で産業競争力が強化され、技術進歩・産業構造の変化が激しい現代、悠長に構えてる余裕など企業にはなく、実践的スキルを有し即戦力となる人材を求め、ジョブ型雇用への注目が高まるのも仕方ありません。


そのような中、大学生に今後問われるのは、抽象的、かつ採用担当者との相性にも依存しやすいコミュニケーション能力というよりは、「どのような目的意識を持って、どのようなスキルを身に着けてきたか」より具体的なビジョンや実績になってくるでしょう。
もっとも、今でも「ガクチカ(学生時代に力を入れてきたこと)」は就活における王道質問ではありますが、その回答を通じてアピールすべき力がコミュニケーション力や計画性、継続力といった抽象的なものでなくより具体的な、業務に直結する知識・スキルへとシフトしているということです。


となると、大学生が身に着けるべき具体的スキルの獲得方法として、学生の本分である授業はメイン候補になります。専攻を決めてそれに関する知見を深めるために学費を払って通っているのですから、それが人生における大事な選択である就活での有利不利に関わるとなれば、授業に求めるものが多くなるのは必然でしょう。大教室でレジュメを配って受動的にただ教授の講義を聞くのではとても物足りず、授業の質向上は避けられない課題となってきます。
かといって、少人数のゼミを毎授業設けることは人件費的にもとても無理でしょうし、大学における教授というのは本来研究者であって生粋の教育者ではないため、各授業における教育効果の追求を課すにも知見の限界があります。


そこで現状のリソースでもあまり無理なく考えられるのは、授業の効率化と学びの密度向上です。前者については、毎年同じような内容を繰り返している講義をビデオコンテンツ化するなどしてオンデマンド形式でいつでも受講できるようにすることで効率的な学習を可能にするといったことです(こうすることで遅延や他の活動とのバッティングによる受講しそびれも防げるでしょう)。
後者については、もう少し各授業の特色を踏まえる必要はありますが、上記方策で余裕ができた時間を活用して週に一度の個別or少人数指導を実施する、オフィスアワーの対応を拡充するなど、講義を通じたインプットに留まらない学びの深化を図ることが考えられます。


このような授業の質向上の模索と切っても切り離せないのが、LMSの活用を始めとした、大学におけるデジタライゼーションです。聞くところでは、LMSで学生の学習状況把握や教育データ(成績や教材閲覧頻度、時間等)蓄積・分析を行い、授業改善に努めている大学もあるとか。
新型コロナウイルスへの対応は、大学側の準備が整っていない段階での予想外の出来事ではありますが、ウイルス感染拡大に伴うキャンパス閉鎖は、授業のオンライン化を含むデジタライゼーションの後押しとなり、授業の質の見える化に繋がっている側面もあります。

オンライン授業の実施により、リアルの友達でなくレジュメやレポートにしか向き合えなくなり、授業コンテンツの単調さ、つまらなさ等に気付いた学生も多いことでしょう。ポストコロナ時代においては、対面授業以外の授業方法もどんどん効果的に取り入れていき、貪欲に「面白い」授業が追求されるべきなのです。


次回は、授業の質向上に資するデジタル技術の活用の在り方、そして「学生の本分」である授業以外での活動の変化についても触れられればと思います!🖐️